平成30年(2018年)中小企業・小規模企業 白書から

中小企業白書における、IT利活用について、コストと効果を具体的に示した事例を豊富に紹介するとともに、日頃の相談相手である地元のITベンダー等がIT導入を働きかけていく必要性等を示しました。更にIT利活用の効果を高めていく上で、業務領域間のデータ連携(財務会計と給与管理間のデータ連携等)や企業間のデータ連携を行っていく重要性を確認しました。
小規模企業白書は第2部では、人手不足の現状を分析した上で、小規模事業者の生産性向上に向けた取組について分析を行いました。具体的には、業務の見直し、IT利活用、設備投資、企業間連携等について分析しました。人手不足を背景に、小規模事業者では経営者に業務が集中しており、未だに紙ベースでの処理が多い間接業務のIT化を進めること等を通じて、経営者が付加価値向上に資する業務に集中する必要性等について分析しました。また、小規模事業者においては、ちょっとした工夫によって大幅な売上向上につながること等を取組事例によって紹介しました。
下記においては、 中小企業(2018)と小規模企業(2018)における「IT利活用について」の関連個所から抜粋しています

「中小企業白書:第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命:第4章:IT 利活用による労働生産性の向上」

第 1 節 中小企業の IT 利活用の現状と課題:IT ツールの利活用状況
代表的な IT ツールについて中小企業の利活用状況を見ると、「十分利活用されている」と回答した企業の比率は、一般オフィスシステムと電子メールで 55%前後であり、経理ソフト等で約 40%、ERP(Enterprise Resource Planning の略称)や EDI(Electronic Data Interchange の略称)で約 20%であることが分かる(下 図)。中小企業の IT ツール利活用は未だ不十分であり、活用度合を高める余地は大きいといえる。
IT の導入・利用を進めようとする際の課題を回答比率の高い順に見ると、「コストが負担できない」と「導入の効果が分からない、評価できない」が約 3 割と高く、次いで、「従業員が IT を使いこなせない」が約 2 割と続くことが分かる(下図)。費用対効果と人材面の 2 点が主要な課題である。
第 2 節 IT 利活用の効果向上と業務領域間の機能連携
ある作業で入力したデータと同じデータを別の作業で入力するのでは業務効率は上がらない。ある作業で入力したデータが別の作業にも自動的に入力されるようにできないかという考え方が業務領域間の機能連携の根底にある。以下は、業務領域間の機能連携の一例である。
  • 給与計算の結果が、会計処理にも自動的に反映される(人事・労務と財務・会計の連携)。
  • 受発注の処理と在庫の変動が連動している(受発注と在庫管理の連携)。
  • 新規取引先を顧客管理データベースに登録すると、受発注システムからも利用できる(顧客管理と受発注の連携)。
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「小規模企業白書:第2部 小規模事業者の労働生産性の向上に向けた取組:第2章:小規模事業者のIT 利活用による労働生産性の向上」

第 1 節 小規模事業者の IT 利活用の現状
小規模事業者の IT 利活用の現状の一つとして IT ツール・サービスの利用状況(経営者年齢別) 下図は、IT ツール・サービスの利用状況について経営者年齢別に見たものである。経営者年齢が若いほど、各種 IT ツール・サービスを利用している割合が高い。他方で、経営者年齢が高いほど、「この中に活用しているものはない」と回答する割合が高くなる傾向があり、70 歳以上の経営者(小規模事業者には定年はない)では2割を占めている。
第 2 節 間接業務の(「財務・会計」、在庫管理」、「給与管理・勤怠管理」、「受発注」、「顧客管理」の )IT 導入状況
間接業務の IT 導入度(常用従業員数別)常用従業員数別に間接業務の IT 導入度を見ると、おおむね規模の大きな事業者の方が IT 導入度は高い(第 2-2-9 図)。しかし、「高レベル」については常用従業員「0人」の事業者(若い方の起業者と考えられる)が最も多い。経営者のみで運営している事業者は、IT を高レベルで使いこなしている割合が高いと推察される。
第 5 節 まとめ
本章では小規模事業者の IT 利活用の現状と課題について確認し、間接業務の IT 導入による効率化、売上向上につながる IT 活用等について見てきた。IT を導入する際に様々な課題があるが、IT 導入が進んでいる小規模事業者の労働5 生産性は高い傾向があると推察された。経営者の業務時間の削減意向が強い領域である財務・会計業務においても同様の傾向が認められる。そうした IT を活用した間接業務の合理化に加え、事例で見てきたような売上向上につながる IT 利活用を進める ことで、小規模事業者の労働生産性をより一層高めることができると考えられる。人手不足の状況下で、効果的な IT 導入支援、IT 利活用の支援がますます重要になるだろう。