人手不足がいよいよ深刻化した昨今、いかに業務を効率化して品質や顧客満足度を
維持するかが、死活問題にもなってきた。DX(デジタル改革)の推進は、人手が足り
ない部分をITが補うことができるという点で確かに間違いない施策だが、そのIT人材
の確保も簡単ではない。
業務効率化と言えばまず選択肢に挙がるのが、RPA(ロボティック・プロセス・オ
ートメーション)だ。請求書や領収書の処理など煩雑な反復作業をロボットで自動化
できれば、人材をもっと建設的な業務に充てられる。ポイントは、専門知識を持った
IT人材に頼らずに自動化プロセスを構築できるかどうかだろう。
自動化できる業務例
- システム入力:帳票からの転記
- システム間連携:システム登録・処理
- データチェック:システムとデータ突合
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- システム検索・抽出:システムからの検索・抽出
- データ集計・加工:ファイルの統合・加工
- Web情報収集:ECサイト巡回・価格調査
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- ファイル作成・変換:Excel化
- ダウンロード・アップロード:ファイルのIn/Out処理
- メール送受信:レポート配信・アラート
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RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション:Robotic Process Automation)導入による
成功事例・失敗事例
RPAは自治体、金融業、製造業など、業界業種を問わず、さまざまな組織や企業で導入が進んでおり、成果を上げています。しかし、RPAは万能ではありません。ここでは、導入に成功したケース、失敗したケースを見てみましょう。
- 定型業務を自動化して労働時間の削減に成功
- ある保険会社では、契約時の申し込み情報が入ったファイルからデータを転記し、基幹システムに登録する作業や、保険金請求手続きの際に、その内容を基幹システムへ登録する作業など、人間が手作業で行っていたデータ入力作業をRPAによって自動化。年間で数万時間という労働時間削減に成功しています。また、RPAを夜間に稼働させることで、始業時間までに前日分のすべての処理が完了。担当者が早出して、作業をする必要がなくなったことで、働きやすさも改善されています。
- RPAに向かない業務に導入しようとして失敗
- RPAが得意とするのは、データ入力や業務レポートの作成など、毎日同じルールで繰り返すような業務です。それを理解せずに、さまざまな要因によって対応が変化するような複雑な業務を何とか自動化しようと試みた結果、RPAを設定するための最初のシナリオ作成が複雑化。RPA導入によって、業務を効率化することが目的であるにもかかわらず、導入に余計な手間がかかってしまい、導入段階で頓挫してしまうケースがあります。
- RPAの導入の流れ
- RPAを導入する際、「何から手をつければ良いか分からない」ということもあるでしょう。企業規模や業務内容、組織内のルールや体制によって、導入の進め方はさまざまですが、ここでは基本的な流れをご紹介します。
- 現在の業務の棚卸
まず導入準備の第一歩となるのが、業務の棚卸です。社内の一つひとつの業務について、「業務の概要」「担当者」「使用しているシステム」「工数」といった要素を整理して、可視化します。これをすることによって、RPA導入がスムーズになるという面もあるのですが、それ以前に、属人化してしまっている、ブラックボックス化してしまっているなど、その業務自体が抱えている課題が顕在化してきます。そうすると、課題解決策として、RPAでなく、別の手段のほうが最適だと分かることもあります。
- RPAを導入する業務の選定
これまでにも述べてきたように、RPAに適した業務と、そうでない業務があります。導入をしようと考えている業務が、RPAに適しているかどうかは非常に重要です。棚卸によって、整理された業務の中で、業務フローがパターン化しているような「定型業務であるか」、毎日もしくは毎週、毎月など、その業務が「定期的に発生するか」、さらに「大量のデータを扱う業務か」、「パソコンだけで完結できるか」などの基準に照らしながら、RPAが導入しやすく、かつ、より成果が上げられそうな業務を選定するようにしましょう。
- 導入するRPAツールの選定
次にRPAツールの選定です。RPAツールには、さまざまな種類があります。ツールを選ぶ際の基準として、自社が抱えている課題や自動化したい業務に適していることは大前提です。それ以外にも、価格だけでなく、運用のしやすさ、将来RPAをさらに活用しておきたいと考えている場合には拡張性、さらにベンダーのサポート体制の充実度なども鑑みて、慎重に選定する必要があります。また、無料で試用版を提供している場合もあるので、まずはそれを利用してみるのも良いでしょう。
- RPAの導入におけるポイントと注意点
- RPA導入のためのフローは前項までに記載したとおりですが、RPA導入を成功させ、その効果を最大化するために抑えておくべきポイントが4つあります。ここから1つずつご紹介します。
- 業務フロー作成:現状が見えていないでRPAの導入は無理です。必ず業務フローを作成しましょう。
- 目標および指標の明確化:RPA導入の失敗事例の中には、「成果が出ているのかどうかが分からない」といったケースもあります。これは、導入段階で、目的や指標を明確にしていなかったことが原因です。RPA導入の目的には、「業務効率化」、「人件の削減」「ヒューマンエラー防止」「働き方改革の推進」などがあります。導入後の効果測定を行うためには、自社が何を目的にしているかを定め、現時点での残業時間、人件費、ミスの発生率など、その変化が比較できるように指標化し、さらに目標値を設定しておくことが大切です。
- テスト導入:社内にRPAに精通している人がまだいない場合には、テスト導入として、スモールスタートをおすすめします。まずはひとつの業務に絞って、RPAの動作確認をし、運用ができるかどうかを実際に経験したうえで、それから少しずつ別の業務にも拡大していくことで、導入失敗のリスクを最小限に抑えることができます。また、RPAツールの中には、無料トライアル版を用意しているのもあるため、そういったものを利用してスモールスタートすることで、ツールの選定も同時に行うことができます。
- RPA人材の育成:RPAを導入した後、より効果的に活用していくためや、トラブル時の対応をするためには、RPAの知識を身につけた人材を確保しておく必要があります。その方法として、導入の前にRPA担当者を1人ではなく、複数人でチームをつくっておくのも良いでしょう。まずはRPAに関する知識や他社の事例などを学んだうえで、実際に導入に着手。その工程を経験しておくことは、その後の運用においても非常に役立ちます。なお、RPAについて学ぶ方法としては、RPAツールのベンダーが行っている体験会、研修、ウェビナーがあります。
- RPA導入の方法は
- RPA(Robotic Process Automation)を導入する方法は、以下のステップに従うことが一般的です。ただし、RPAの導入は組織によって異なる要件や状況に合わせてカスタマイズされるべきです。
- 目標の設定とプロセス選定:
RPAの導入の最初のステップは、何を達成したいのかを明確にすることです。どのプロセスを自動化するかを選択し、それによって期待される成果を明示化します。プロセス選定は、効率向上、エラー削減、コスト削減、時間短縮などを考慮に入れて行います。
- RPAツールの選定:
選択したプロセスに適したRPAツールを選びます。市場には多くのRPAソフトウェアがあり、その中から適切なものを選ぶ必要があります。ツールの価格、スケーラビリティ、セキュリティ、サポートなどを検討します。
- プロジェクトの計画と予算の策定:
RPAプロジェクトの計画を立て、予算を策定します。これにはライセンス費用、トレーニング費用、ハードウェア・ソフトウェアの購入費用、開発・導入のコスト、メンテナンス費用などが含まれます。
- RPAチームの編成:
RPAプロジェクトの成功には、専門的なスキルを持つチームが必要です。RPA開発者やビジネスアナリスト、プロジェクトマネージャーなどが含まれることが一般的です。
- プロセスの分析と改善:
選択したプロセスを詳細に分析し、必要な変更や最適化を行います。プロセスがRPAに適しているかどうかを確認し、必要に応じてプロセスを改善します。
- ロボットの設計とプログラム:
RPAロボットを設計し、プログラムします。これには、ワークフローの作成、データの取得と処理、条件分岐の設定などが含まれます。
- テストとデバッグ:
RPAロボットをテストし、動作を確認します。問題があればデバッグを行い、パフォーマンスを最適化します。
- ロボットのデプロイメント:
ロボットを本番環境にデプロイします。必要に応じてトレーニングを行い、運用スタッフにサポートを提供します。
- 監視とメンテナンス:
RPAプロセスを定期的に監視し、問題が発生した場合に迅速に対応します。また、プロセスの変更やアップデートが必要になることも考慮します。
- 成果の評価:
RPA導入の成功を測定し、事前に設定した目標と比較します。効果的なKPI(Key Performance Indicators)を使用して成果を評価します。
RPAの導入は組織によって異なりますが、上記のステップを遵守することで、RPAを効果的に導入し、業務プロセスの自動化と効率化を実現することができます。
- RPAの導入実例:2018年版中小企業白書の概要より:事例2-4-18:株式会社ウェルクス
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「自動化ツールの導入でコア業務への集中を可能とし売上拡大を実現した企業」
東京都台東区の株式会社ウェルクス(従業員262名、資本金1,200万円)は、保育士、栄養士の人材紹介等を手掛けている。保育士の人材紹介サービスには現職保育士の約1/5が登録していて業界トップシェアを占めている。
・・・
求職者の希望条件を満たす施設の抽出作業は表計算ソフトで行っている。
抽出には数十項目の条件設定が必要であり、FAX送信1件につき5~15分程度の時間が掛かる。
この作業は事務員1名が行っていたが、単純かつ大量の定型作業にやりがいを見いだせず退職してしまった。代わりに三谷卓也社長が担当することになったが、1か月あたり約1,000件のFAX送信が発生し、業務の合間や退社後等も含め1日4時間以上対応するという深刻な負担になっていた。
こうした中で、RPA(Robotic Process Automation)ベンダーから、複数システムを連携して自動化できるとのDMを受け取った。FAX送信業務の自動化に利用できると直感し、すぐにベンダーに相談して導入を決めた。
開発者向けの詳細な要件定義等は不要であり、RPAの導入は一般的なITシステムより容易である。三谷社長は、従業員向けに作成していた業務マニュアルを1日でロボット向けに書き直してシステム会社に提供したのみである。投資負担も小さく、初期導入費用が30万円、ランニングコストが月数万円程度であった。
RPAの導入により、1件あたり平均10分の時間を要していた抽出作業は自動化された。単純な定型作業は、人間には単調で面倒でミスが発生しやすいが、RPAではミスが起きず作業の正確性が増す。「なにより社長としての業務時間が1日4時間確保でき、経営に時間を費やせるようになったことが大きい。」と三谷社長は語る。例えば、これまで時間を捻出できず見送っていた、各グループ責任者との定期ミーティングの実現等の効果があった。RPAの導入後、同社の売上高は2.5倍に増加している。「全てがRPAによる効果とは言えないが、人材採用が難しくなっている中でRPAによる自動化がなければこれだけの業務拡大は実現できなかった。」と三谷社長は語る。
RPAは単純だが作業量が膨大な業務で効果を得やすい。同社ではFAX送信業務への導入を皮切りとして、勤怠情報の修正業務、個人情報の削除処理業務等へとRPAの導入を広げている。今後は営業支援・顧客管理システムと会計システムとの連携等にも活用していく構想である。
- RPAの導入実例:弊社が行った製造業の場合
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プラスチック製品の製造業において実施したRPA導入は、WEB受注データを既存データシステムへの入力工程の自動化です。
当時(20年前ごろ)はWEB受注データを受注業者に発行することがはやり始めたころでもあります。
RPAという言葉は使用されていなかったが、非常に無駄時間を使用しているので入力工程の自動化を行いました。その方法は非常に簡単です。
その事業者はオバー仕様で使用していたので、仕様のレベルダウンをお行い、既存データベースの仕様変更(受注データインポート機能)しました。(仕様のレベルダウンで仕様変更料を賄うことができました)
RPAの仕様(MicosoftAccsessで作成)は
- WEB受注データをCSVファイルに変換。
- CSVファイルを既存データシステムにインポート。
です。効果として、工数削減、入力ミス削減に寄与したことは言うまでもありません。
*CSVファイルとはCSVファイル利用効果をご覧ください。
左記事例と同等ですが、
既存システム(給与計算システム、受注システムなど)1端末でしか使用できない環境(月額利用料は利用ユーザー数に応じて高くなる。)の企業は多いと思います。Excelファイルを他端末に設定すればデータ共有:効率化が行えます。交通費など本人が作成する事でデータ授受に関する問題はなくなります。この処理を構築することで残業代・光熱費の削減と一石二鳥となります。