定年後の起業方法は?


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起業か、再就職か

起業と再就職の大きな違いは、新たに自分で組織を創るか、既存の組織に入ってその一員として仕事をするか、ということです。
・起業という形では、自分のアイデアや夢を実現し、社会に貢献することが可能となりますが、一方で、起業するための資金が必要で、創った組織に対する責任も重大となり、リスクも大きくなります。
・再就職の場合は「雇われる」側ですから、どちらかといえば自分の時間の一部を組織(企業)のために使うという考え方ですが、起業の場合は「雇う」側となり、自分の時間の全てを自らの事業(起業)のために使うという意識になります。
まず「自分のやりたいことは何か」を考え、それを実現するためには「組織に入った方が良いのか」あるいは「自ら独立した方が良いのか」、更には「仮に独立したとして、うまくいくか」などについてじっくり検討した上で、「起業」するのか、「再就職」するのかを決める必要があります。

起業の前に

起業すると決めた場合、「何をしたいか」を明確にすることはもちろんですが、まずその準備段階で、「自分に何ができるのか」、「自分の資源は何か」を整理しておくことが大切です。

経験を生かす

これまでの勤務経験やスキルは、起業する上での大きな武器になります。日本政策金融公庫総合研究所の調査によれば、「仕事の経験・知識や資格を生かしたかった」を一番の動機に挙げています。また、開業した者の約4分の1が50歳以上であり、中高年者による開業が長期的にみると増加傾向にあるとしています。

開業動機割合
自由に仕事がしたかった53.9
収入を増やしたかった37.4
仕事の経験・知識や資格を生かしたかった22.6
社会の役に立つ仕事がしたかった6.7
年齢や性別に関係なく仕事がしたかった7.2
資料:日本政策金融公庫総合研究所「2020年度起業と起業意識に関する調査より抜粋

関連情報を収集する 目次へ

起業に関する情報は、インターネットや書籍等で多く見られるようになってきました。これらの情報を収集するとともに、どのような「もの」あるいは「サービス」が世の中で喜ばれるのか、どのようなニーズがあるのかについて、日頃から注意していることも大切です。情報を集める中で、自分がやりたいことを実現するために必要な、知識や資格等が明らかになり、それらを習得していくことで一歩ずつ実現に近づくことになります。

周りの理解を得る  目次へ

起業すると、今までのいわゆるサラリーマンとは異なり、リスクや責任が伴います。それまでの公務員時代は、安定した組織の中で、その一員としての役割を果たすことで給与を得ることができました。しかし、起業となると、どんなに小さくても一国一城の主となり、自分の行動ですべてが決まり、結果のすべてを負うことになるといっても過言ではありません。その影響は、配偶者はもちろん家族にも及びます。起業することによって家計はどうなるのか、どこで起業するのか、それによって住むところはどうなるのか、家族と過ごす時間はどうなるのかなど、いろいろな変化が起こることが考えられます。配偶者をはじめとして、周りの理解を得ることが必要です。

ネットワーク(人脈)を大切にする  目次へ

ビジネスで重要なのは人とのつながり、ネットワークです。長いサラリーマン生活を通して様々な人とのつながりができていますが、同じ組織の中の、狭いネットワークだけでは不十分です。年齢に関係なく、新たに人とのつながりを作っていく努力が特に必要となります。また、同じ志を持つパートナーや仲間と協同して事業を興す場合には、役割分担や情報の共有など、十分にコミュニケーションをとることが重要です。

起業のための条件  目次へ

起業にはリスクが伴います。働き方の一つの選択肢として、また「やりたいこと」や「目標」がはっきりして、それを実現するには起業するのが一番良いということになれば、起業への第一歩を踏み出すことになります。起業するに当たっては、過大なリスクを背負わない範囲から始め、起業時の固定費用をできるだけ抑えて行うことが堅実です。例えば、自宅を事務所としてスモールカンパニーを設立し、まずは従業員なしで、自分もしくは家族だけでスタートするいわゆるSOHO(ソーホー:Small Office HomeOffice)として始めるのも一案です。起業に当たっては、次のことを再度確認することが大切になります。

熱意はあるか  目次へ

起業では、何事も自分が率先してやらなければ物事は進みません。そのためには、自らの「熱意」が不可欠となります。熱意があれば、多少の困難も乗り切ることができるでしょう。

勝算はあるか  目次へ

起業して独立しても、それがうまく軌道に乗って「成功」するか、あるいは、途中で資金が無くなったり、顧客が離れていって「失敗」に終わるかなど、公務員時代とは比較にならないほどのリスクにさらされることになります。そのためには、起業の前に、その見通しとともに「勝算」について十分考える必要があります。

問題点が何かわかっているか  目次へ

目標やビジョンが明確になり「起業」への熱意が十分であっても、常に冷静に自分が考える事業を見つめ直す余裕が必要になります。そのためには、その事業を行っていく上での問題点や課題を見据え、障害は何か、不足しているものは何かを理解し、問題を解決していく方法を日頃から考えることが大切です。

覚悟はあるか  目次へ

起業すると、土曜も日曜も休みなく仕事をすることになるかもしれません。仕事が軌道に乗るまでは土日もなく働いたという起業家は少なくありません。それに見合った体力、気力が必要です。また、組織に属して働いていたときには組織の看板が通用しましたが、もうそれは通用しません。どんなことでも自分でやるという覚悟が必要になるのです。

起業のタイプ  目次へ

中高年者の起業は「安定収入型」と「ハイポテンシャル型」に分けることができます。

安定収入型  目次へ

個人又は少数の従業員を雇いながら、規模は小さくても安定した収入を得ることを第一の目的とする起業形態です。多くの中高年者がこの形態を志向しており、就業中に得たスキルを継続的に活用するケースや新たなスキルを身に付けるケースが一般的です。

「安定収入型」の起業の事例

  • 市役所職員から牧場経営者に転身:10年間市役所に勤めた後、農協に頼らないマイブランド牛乳、乳製品等の生産を行い、独自の流通ルートを確立した自然農場を設立した。
  • ハローワーク職員からキャリア支援会社を開設:ハローワークを退職した後、若者を対象にしたキャリア支援会社を設立すると共に、女性の自立支援をするNGO法人を設立した。
  • 半導体製造装置メーカー取締役から情報関連コンサルタントに転身:世界的な半導体製造装置メーカーで、技術・開発に携わり取締役まで勤め上げた後、55歳でベンチャー企業を興し、60歳から情報システム分野のコンサルタントに転じた。
  • 大手素材加エメーカー退職後、チーズケーキ専門店を開業:ジェネラリストとして、大手素材加工メーカーに定年まで勤めた後、チーズケーキ製造に取り組み、62歳で開業した。
  • 大手電気メーカーを退職後、健康喫茶店を開業:長年、家電メーカーに勤務したが、56歳で「全く違う畑でチャレンジしたい」と、関心のあった健康喫茶店の開業をした。
  • 広告代理店CFクリエイターから植木屋へ転身:大手広告代理店を57歳で退職し、趣味で植木いじりをしていたことから造園の補助作業員として修業を積んだ後、59歳で起業した。

ハイポテンシャル型  目次へ

積極的な投資を行うことによって事業を拡張し、高いリターンを志向する起業形態です。就業時代に身につけたスキルを活用するケースが多く、仲間とともに起業するのが一般的です。

「ハイポテンシャル型」の起業の事例

  • 最大手企業の役員を辞め、自らの志向に合ったカー用品会社を起業:カー用品業界最大手会社の常務であったが、効率性重視の経営方針に違和感を感じて49歳で退職し、顧客のニーズに応じたサービスを提供すべく、新たにカー用品店を開業した。
  • 工務店役員を辞め、キャッシュフロー経営の建設会社を起業:入社した工務店が倒産し、次に移った工務店では支店を立ち上げ、取締役に就任した。キャッシュフロー経営(現金の流入や流出を重視した経営手法)を行いたいため、44歳で社長の許可を得て独立した。
  • メーカー研究部長から、LSI(半導体集積回路)、通信システム等の開発会社を起業:大手メーカーの研究部長として、顧客の注文通りのLSIを設計し、生産は外部に委託することで設備投資競争と決別することを目指した提案が受け入れられず、49歳でスピンオフ(親会社から支援を受けて独立するベンチャー起業)して、LSI設計、通信システム等の開発を行う会社を興した。
  • テフロン会社に続き、介護サービス会社を起業:大手不動産会社の草創期に種々の事業の立ち上げに携わり、退職後、テフロン開発会社を起業した。事業が軌道にのったところで、その経営を後継者に譲り、52歳でミニホーム付きのデイケア・サービスの会社を設立した。
  • 大学の研究者から、医薬品開発会社を起業:大学薬学部で寄付講座の客員教授を務めていたが、自分の提案した研究テーマが大学では認められなかったため、このテーマを事業化するべく、54歳で起業に踏み切った。
  • 大学教授退職後に、脳機能解析会社を起業:大学を定年退職してから、それまで行ってきた研究を継続するために、地元インキュベーター(企業育成支援のための機関)を利用して会社を設立した。

起業へのステップ  目次へ

起業を志向し何を行うかを決めたら、次のようなステップを踏んで、具体的に起業に ついて検討します。

事業プラン・実行計画を作成する  目次へ

実際に事業を行っていくには、その実行計画がしっかりしていることが最も重要です。計画を策定する上でのポイントとしては、次のようなことがあります。

  1. 事業内容は明確か どのような「もの」あるいは「サービス」を、誰に対して提供するのかを明らかにします。これによって、いわゆる顧客は誰かがはっきりして、ターゲットを絞り込むことができ、提供する「もの」や「サービス」の品質を改善していくことが可能になります。
  2. 競業者は誰か
    事業を展開するに当たって、同業種の動向を把握すると共に、それらと較べたときに、優位性はどこにあるか、どこで差別化できるのかを検討します。
  3. 経営計画に無理はないか
    仕入れ計画、開発・生産計画、販売計画などを考える上で、見通しに甘さはないか、無理な資金計画ではないかなどについて検討し、事業を継続的に行える、無理のない計画となっているかを確認します。
  4. リスクとその解決策が考えられているか
    事業を展開するに当たって想定されるリスクや問題が考えられているか、危険分散の方法や、実際に問題が生じてしまったときの対処方法、解決策を検討します。
  5. 借入金返済計画や収支予測に無理はないか
    開業に必要な資金の借入は可能か、その返済計画は現実的なものかについて検討するとともに、収支予測を立案します。

資金計画を作成する  目次へ

起業する上では、開業資金が必要になります。開業後は、事業が軌道に乗るまでの運転資金も必要です。そのためには、資金計画が不可欠となります。

  1. 自己資金の洗い出し 次の項目についての金額を算出し、自己資金を確認しておきましょう。
    自己資金= 資産合計- 負債合計- 生活必要経費
    資産:預貯金、各種積立金、保険、株券(各種有価証券)、不動産、自動車、 貴金属、退職金、その他
    負債:各種ローン、滞納金、その他
    生活必要経費:当面の生活費、緊急時の費用、その他
  2. 独立前に必要な資金の算出 起業の準備段階で必要になる資金としては、次のようなものがあります。
    事務所の経費:敷金、礼金、保証金、仲介手数料、契約料、駐車場代、その他
    設備費:内装工事費、外装工事費、配管工事費、看板作成費、その他
    備品費用:デスク、椅子、キャビネット、パソコン、パソコン周辺機器、ソフトウエア、書籍、文具事務用品、消耗品、自動車、その他
  3. 独立後に必要な資金の算出 人件費:給料、保険・年金、福利厚生費、交通費、その他
    事務所維持費:家賃、光熱水道費、修繕費、看板使用料、その他
    仕入れ関連費:仕入れ、外注費、材料費、加工費、その他
    この他にも、リース費用、広告費等が考えられます。 これらの資金を洗い出した上で、資金計画をたてる必要があります。資金計画は、できれば数年先まで考えたいものです。

起業の形態を決める  目次へ

事業プランが完成したら、次に「事業をどのような形態で行うか」すなわち「法人を 設立するのか、しないのか」、「法人を設立する場合は、どのような法人にするか」を検 討し、決定します。 ちなみに、多くの起業家は最初から法人は作らずに、とりあえず個人事業(青色申告)から始めている ようです。業種によりますが、最初は無理に法人を作らず、まず個人で事業を立ち上げ、経営的にも資金的にも体力がついたところで、節税効果の観点からも法人化する場合が多いようです。

法人を創る手続  目次へ

法人にもいろいろな種類がありますが、ここでは、株式会社の発起人設立とNPO法人の設立の手順について簡単に説明します。

①株式会社(発起人設立)の設立手順
  1. 設立準備
    ・法務局に行き、類似した商号(会社名)がないかどうかを確認する。
    ・発起人会を開催する。
  2. 定款の作成
    ・商号・事業目的など、会社の組織や活動内容について定める。
  3. 定款の認証
    ・定款を公証人役場に持っていき、認証を受ける。
  4. 株式の払込み
    ・銀行等の金融機関に株式の払込みをする。
  5. 取締役会の開催
    ・代表取締役及び取締役等を選任する。
    ・その後、取締役、監査役による調査書を作成する。
  6. 登記申請
    ・法務局に、法人設立登記を申請する。
    ・登記完了後、株式会社が誕生する。
get="_blank">② NPO法人の設立手順
  1. 設立準備
    ・設立発起人会を開催し、定款や事業計画を話し合う。
  2. 設立総会を開催
    ・社員も加え、定款や事業計画、運営ルールを決議する。
  3. 設立認証の申請
    ・設立認証申請書、定款、役員名簿、就任承諾及び誓約書、社員の名簿、設立趣旨書、確認書、住民票、設立についての意思の決定を証する議事録、設立初年及び翌年の事業計画書、設立初年及び翌年の収支予算表を作成する。
    ・各種申請書類を所轄庁に提出する。
  4. 受理後、審査(約4ヶ月)、縦覧(約2ヶ月)・認証・不認証が決定される。
    認証された場合は、所在地を所轄する法務局に設立登記の手続きを行う。
  5. 設立登記申請書類の作成・申請
    ・登記申請書・登記用紙・印鑑届書・認証書の写し・定款の写し・就任承諾及び誓約書の写し・設立当初の財産目録の写し、代表者の印鑑証明書の写しを作成する。
    法人印を作る。
  6. 登記申請
    ・法務局に、設立に係る書類を提出する。
    ・登記完了後、NPO法人が誕生する。
https://www.jinji.go.jp/shougai-so-go-joho/pdf/p1sec2.pdfより

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