「サステナブル(Sustainable)」とは、英語で「持続可能な」「維持できる」という意味を表す形容詞です。日本語では「サステイナブル」「サスティナブル」と表記することもあります。現在は日本をはじめ、世界各地でサステナブルな社会の実現をめざした取り組みがおこなわれています。
サステナブルという言葉は、社会面・環境面を考慮しながら、経済活動を持続可能な形で発展させるための概念として使われてきた経緯があります。
そもそもサステナブルの概念が広まるきっかけとなったのは、1987年に「環境と開発に関する世界委員会(委員長:ブルントラント・ノルウェー首相=当時)」が公表した
「Our Common Future」
という報告書です。この報告書では「将来の世代のニーズを満たしつつ、現在世代のニーズも満たす開発」が持続可能な開発であると捉える立場を示しました。
この頃から経済発展と環境面・社会面の持続可能性の関係は必ずしも相反するものではなく、互いに共存しうる概念だと考えられるようになりました(参照:「持続可能な開発 Sustainable Development|外務省)
。
当時は今ほど「サステナブル」という言葉自体は社会に浸透していませんでしたが、今だけよければいいという考えではなく、未来の環境や人々の健康のことも見据えて、美しく豊かな地球をずっと維持していこうという考えにもとづく「サステナブルな社会をめざす活動」は徐々に広がっていきました。
サステナブルな社会が注目されている理由
なぜ今、サステナブルな社会をめざす活動に対する注目が高まっているのでしょうか。その主な理由を解説します。
- 地球環境の危機的な状況
- 気候変動に関する危機的状況
気候変動による平均気温上昇や極端な気象現象が近年増加しています。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2011~2020年の世界の平均気温が1850~1900年よりも1.09度高くなったと報告し、地球温暖化が人間の活動によるものであることに疑いの余地はないとの立場を示しています。
このまま有効な対策をとらず温室効果ガス(GHG)排出が非常に多いシナリオ(SSP5-8.5)をたどった場合、21世紀末の世界の平均気温は3.3~5.7度高くなる可能性が非常に高いとされています(参照:
た(参照:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 気候変動2021:自然科学的根拠 政策決定者向け要約(SPM)暫定訳_2022年12月22日版|気象庁)。
日本でも最高気温35度以上となる猛暑日の日数が年間平均約0.8日(1910~1939年)から2.5日(1992~2021年)に増加するなど、平均気温の上昇が観測データによって示されています。また1時間に50mm以上など、短時間に強い雨が降る回数も増加傾向にあります(参照:
大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化|気象庁)。
大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化|気象庁)。
極端な気象現象の増加は、海面上昇、森林火災、砂漠化などさまざまな問題を引き起こす要因となります。
- 汚染に関する危機的状況
汚染問題は大きく分けて大気汚染、海洋汚染、土壌汚染、水質汚染があります。
大気汚染は、工場の生産活動や、飛行機や車による輸送・移動で汚染物質が大気中に放出されることで生じます。
身近な大気汚染の影響は酸性雨、光化学スモッグ、PM2.5 などが代表的です。
大気中に放出される大気汚染物質は人々の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります(参照:
大気汚染が引き起こす問題|環境省)。
海洋汚染は、海に流れ込むごみや汚染物質が原因で生じます。
海洋プラスチック
は海の生物が誤飲したり絡まってしまったりなどの被害を引き起こすほか、海洋環境の悪化、漁業や観光業への影響などさまざまな問題につながります。
1950年以降に生産されたプラスチック類は83億tを超え、63億tがごみとして廃棄されたという報告や、2050年に海洋プラスチックごみの重量が魚の重量を超えるという試算もあり、世界全体の課題として対処する必要があると認識されています(参照:
令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書|環境省)。
土壌汚染は、有害物質が土壌に蓄積して起こる環境問題です。重金属、農薬、化学薬品、油などで汚染された土壌で育てられた農作物、汚染された地下水を摂取すると、健康被害を引き起こすことがあります。
水質汚染の原因は、主に工業排水と生活排水です。かつて日本で問題になった水俣病やイタイイタイ病などの公害は工業排水が原因でした。有害物質を含む産業排水が河川や湖に流れ込むことで水質汚染が発生しますが、現在の日本では規制が強化され工業排水による水質汚染は改善しています(参照:
水質汚濁対策|環境省)。
- 生物多様性に関する危機的状況
生物種の絶滅速度は、人間の活動の影響で、ここ数百年で約1000倍に加速していると言われています。
生物多様性は四つの危機にさらされています。第一の危機は開発や乱獲によるもの、第二の危機は人間による働きかけの不足によるもの、第三の危機は外来生物や化学物質によるもの、第四の危機は気候変動など地球環境の変化によるものです。
人間を含めた生物の営みは互いにかかわりあっており、生物多様性がもたらす恵みによって私たちの生命や暮らしは成り立っています。
過去から引き継がれてきたこの恵みを資産と考え、将来の世代にも承継されるように、自然を損なわない活動をすることが必要です(参照:
生物多様性民間参画ガイドライン第2版|環境省)。
- 深刻な経済格差
- 世界の格差問題
世界不平等リポート2022によると、世界の富の分布はトップ10%の富裕層が全体の76%を占め、ボトム50%の貧困層が持つのは全体の2%しかないと報告されています。
所得についてもトップ10%の人々が全体の52%を手にしているのに対し、ボトム50%の人々が手にする所得は8.5%にすぎません。
格差が縮まらない原因としては、社会保障制度の不備、税制、金融市場のしくみ、急速な技術進化の影響、居住地(都市部・農村部・内陸部・沿岸部などのちがい)によるものなどがあげられます(参照:
生物多様WORLD INEQUALITY REPORT 2022 p.10、
不平等 ― 格差を埋めよう|国際連合広報センター)
。
- 男女間の経済格差
コミュニティーや家庭内にも格差は存在しています。女性の労働参加率は過去30年間上昇してきましたが、どのOECD加盟国においても依然として男女間賃金格差が存在します。
日本の男女間平均賃金格差はOECD加盟国中3番目に大きく、一般的に女性就業者の賃金は男性就業者よりはるかに低い状況です(参照:
不男女間賃金格差(Gender wage gap)|OECD)。
- 人口増加による格差の拡大
国連は2022年11月に世界人口が80億人に達したとみられると発表しています。
公衆衛生が向上し平均余命が伸びたことが人口増加のひとつの要因です。
長寿化や妊産婦・乳幼児死亡率の低下は喜ばしいことです。しかし人口増加は世界の最貧国に集中しており、これらの国々が直面する食料、水、エネルギーの不足がさらに深刻化し、先進国との格差拡大につながる可能性があります。
今後、世界人口は2080年代に104億人となりピークを迎えると予測されています。また高所得国と高中所得国の人口増加は、2050年までのあいだに65歳以上のみで起こると考えられており、労働力人口減少による経済成長率の低下などが心配されます(参照:
世界人口が80億人に達する中、すべての人のための持続可能な開発を進めるため国連が連帯を呼びかけ|国際連合広報センター)。
- 「SDGsアクションプラン2023」の重点事項
- People 人間:多様性ある包摂社会の実現とウィズ・コロナの下での取組
- 「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022」等に基づき、あらゆる分野での女性の活躍を推進。
- 子供の貧困を行う。対策や持続可能な開発のための教育(ESD)を推進し、次世代の更なる取組を喚起するなど、人への投資
- 「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」等に基づき、外国人との共生社会の実現に向けた環境整備を一層推進。
- グローバルヘルス戦略等に基づき、パンデミックを含む公衆衛生危機に対するPPR(予防・備え・対応)を強化。
- より強靭、より公平、より持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組推進。
- Prosperity 繁栄:成長と分配の好循環
- 「デジタル田園都市国家構想」の実現を通じ、地域の個性を活かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会の実現に取り組む。
- 国内外の社会課題解決やイノベーションを促すため、日本企業と海外スタートアップ等とのオープンイノベーションを推進。
- これまで進めてきた「SDGs未来都市」に加え、新たに複数の地方公共団体が連携して実施する脱炭素化やデジタル化に関する取組に対しても支援を行うことで、地方におけるSDGs達成に向けた取組を加速する。
- 「熊本水イニシアティブ」に基づき、気候変動適応策・緩和策を両立するハイブリッド技術を活用した「質の高いインフラ」整備の取組推進。