電子署名と電子契約
電子署名とは
まず電子署名とは、契約のなかで、合意成立の手段として、インターネットや専用回線などの通信回線による情報交換を用い、かつ合意成立の証拠として、電子署名やタイムスタンプを付与した電子ファイルを利用するものをいう。
電子契約とは
電子契約とは「契約書を電子的に作成し、通信回線を用いて相手方とその内容について合意形成すること」となります。電子契約は契約書を電子化、デジタル化する行為のことであり、電子署名はその中で電子文書が本人により作成されたことを表す役割を果たすものであり、明確な違いがあります。
- 電子契約の6つのメリット
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- 印紙税の削減
紙の契約書は法律により、収入印紙を貼ることが義務付けられています。税額は契約の種別や契約金の大きさによって異なります。1件辺り200円~大きいものでは数十万円。1件の金額は高額でなくなくても、建設業・工事業・運送業など多くの請負契約を結ばなければならない企業にとっては大きな負担です。電子契約に切り替えた場合、契約書は法律で言うところの「課税物件に掲げる文書」ではなくなるため、印紙税が不要になります。また、収入印紙を貼るのを忘れてしまった場合、「税の納付を怠った」として納付すべき額の3倍を徴収されてしまいますが、そのリスクを避けることもできます。 - 事務労力・コストの削減
紙の契約書の場合、1つの契約を締結するまで多くの事務作業が必要になります。たとえば、「契約書を印刷し、製本する」「契約書に収入印紙を貼る」「押印する」「封筒に宛名を記入する」「封筒に契約書を封入する」「郵便局に投函しに行く」など。手間暇だけでなく、インク代・印刷代・郵送代などの事務コストも見逃せない部分です。電子契約では、契約書のやりとりはインターネット上で行われます。電子ファイルをアップロードするだけで済むため「印刷・製本」「宛名書き」「封入・投函」などの事務作業は必要ありません。スタッフはその時間を他の作業に費やすことができます。インク代・印刷代・郵送代などのコストも省けます。 - 契約締結までのリードタイムの短縮
書面契約の場合、合意した後も契約書原本を印刷して製本し、押印して送付。取引先に押印してもらい、返送してもらうなど時間がかかります。決裁者・担当者が不在の場合には数週間かかることも少なくありません。ビジネスにはスピードが重視される今の世の中、致命的な遅れになることも考えられます。電子契約であれば、クラウド上でデータを確認し、合意したその場で契約締結することができます。システム・サービスによっては、契約合意前の契約書作成をサポートする機能を備えたものもあります。クラウド上で「承認作業が今どの段階にあり、誰のマターなのか」というステータスを管理することがでるため、作業の遅延や漏れも起きにくくなります。 - 保管・管理の効率化
契約書は法律により、一定期間、保存が義務付けられています。紙の契約書の場合、原本をファイリングして、キャビネットなどに鍵をかけて保管しておくのが一般的です。しかし、企業によっては「保管スペースに余裕がない」「ファイリングが面倒臭い」「どこに何があるか分からない」など上手く管理できない企業も少なくありません。電子契約の場合、契約書はデータとしてクラウド上にまとめて保管できます。保管方法やスペースに悩むことはありませんし、情報漏洩や紛失のリスクを回避することができます。また、検索機能を利用すれば必要に応じて目的の契約書を簡単に閲覧できます。既存の書面の契約書もスキャンして電子化することで、有効活用することもできます。 - リモートワーク対応が容易
2020年、コロナ禍で急速に広まったテレワーク・在宅ワークなどのリモートワーク。契約を締結したいのに「会社の判子がなくて押印できない」「プリンターがないので印刷して製本できない」そんな理由で、自宅から会社にわざわざ出勤している人も少なくありませんでした。電子契約であれば、紙と押印を必要としないため、場所と時間を選ばずに契約を締結させることができます。現状、リモートワークを補完的にしか利用していないものの「感染拡大に合わせて、臨機応変に切り替えたい」もしくは「将来的に完全リモートワークにしたい」という場合には、今のうちに導入を進めておきましょう。 - 契約更新の確認漏れ防止
サービスを提供する側にとっても、受ける側にとっても、契約期間の終期は重要です。「サービスの見直し」「契約打ち切り」を検討し、何らかのアクションを起こす必要があります。しかし、膨大な量の契約を管理していると「更新期限に気づかず、期限を逃してしまった」という場合も起こりえます。電子契約なら、契約期限の管理も容易です。たとえば「契約終了の2か月前に自動通知」と言うように、更新期限が近づいたらアラート通知をするよう設定することもできます。通知回数の設定、期限以外の通知条件の追加、通知先などの条件も柔軟に設定することが可能です。
- 印紙税の削減
- 電子契約の活用の注意点やデメリット
どんなメリットがあるのか理解したところで、次に電子契約に切り替える上での注意点やデメリットについて説明していきます。 - ●すべての契約が電子契約に対応しているわけではない
契約には様々な契約類型が存在します。大多数の契約が電子契約できますが、一部利用が制限されているものもあります。たとえば、以下の契約は法令の定めにより紙の書面が必要とされています。現状では、双方の承諾・希望が合致したとしても電子契約を結ぶことはできません。
- 定期借地契約・定期建物賃貸借契約
- 宅地建物売買等媒介契約
- マンション管理業務委託契約
- 訪問販売等特定商取引における交付書面
- 労働者派遣(個別)契約 など
ただし、派遣法改正により、2021年1月より、労働者派遣(個別)契約書の電子化が解禁されました。現在のデジタル化の潮流を考えると、上に挙げた契約書も将来的には電子化が認められるようになると予想されます。
●電子契約に切り替えるには取引先の協力が必要
契約書は取引先あってのものです。いくらメリットがあるからと言って、一方的に電子契約に切り替えることはできません。同意を得る必要がありますが、取引先によっては拒否反応を示すことも考えられます。その場合、単に利用を促すのではなく、電子契約のメリット・法的証拠力などを分かりやすく説明し、協力をあおぐようにしましょう。合意が得られなかった場合、以下のように紙の契約書と併用して運用することになります。
- 取引先とは紙で締結。取引先は紙の原本を保管して、自社はPDF化して電子保管
- 取引先とは紙と電子でそれぞれ締結。取引先は紙の原本を保管して、自社は電子契約したものを保管
ただし、実際には2は手間になるため利用機会は限られそうです。1の方が現実的です。
●取引先の状況によってはサポートが不可欠
取引先から「電子契約を受け入れる」という合意を得る上で重要なのが、電子契約を利用するための「コスト・労力」などの準備負担の部分です。いくら電子契約に切り替えるメリットがあるとはいえ、取引先としても余計な初期投資や手間暇は避けたいところでしょう。双方が同一のシステム・サービスを利用するのが一番ですが、中にはアカウントを持たなくても、リンク先のURLを送るだけで、クラウド上で契約締結が可能なものもあります。ただし取引先担当者がインターネットやITに抵抗がある場合、設定・操作に手間取る可能性があるため、フォローをお忘れなく。
それ以外にも「電子契約書は法的な証拠力があるのか」など問い合わせが寄せられることも考えられます。事前に説明しておくのはもちろん、利用開始後も同様の質問が寄せられることが考えられるため、トークスクリプトを用意しておくことをお勧めします。
最後にもう一度
- 印刷が不要で手書きによる記名や押印がいらない。
- 3Dプリンターで印影を偽造できてしまう現代において、契約書の改ざんリスクを抑えられる。
- 郵送する手間やコスト、時間を節約でき、内容の誤りや変更への対応もスピーディーに対応できる。
- 契約書の保管や検索もしやすい。
- ある試算によると、書面の契約コストは郵送や人的コスト等で1契約あたり500円以上かかり、さらに数百円から数千円の印紙税も必要になる。これが電子契約であれば、印紙税がゼロになる。